針と糸だけで作られるニードルレース(随時更新)
アイキャッチ画像は Pinterest より引用したニードルレースの画像です。明らかに編んでいません、ニードルレースで検索した際に、ボビンレースの教本を説明部分でニードルレースと書いたサイトがありましたが、編まない1本糸の仕上げは同じですが、ボビンレースとニードルレースは作成方法自体が全く違います。
ニードルレースとは、針と糸だけで作られるレースの事を言いますが、広義の場合は、刺繍レースの事もニードルレースと言えます。しかし、それも別物である事から、生地やチュールを芯としている刺繍レースは、「ニードル・ポイント・レース」、芯の無い糸だけでできたレースを「ニードル・レース」と、業界では区別する様になりました。
ニードルレースの歴史は15~16世紀イタリアのドロンワーク、カットワークに起源しています。レースの歴史に関する専門ページとダブっている部分が多いので、詳しくはぜひ下記ページをご参考下さい。
「豆知識としてレースの歴史を少し詰め込みました」
では、過去から現在まで、どんな種類のニードルレースがあったのか、また、ネット上に数あるニードルレースにノットレースの手法を使われるレースは、どっちに分類されるべきか、手を尽くして調査したデータと画像で、勉強して行きたいと思います。
歴史上のニードルレースとは
上述したように、起源とされたドローンワーク、カットワークは刺繍レースに分類されることから、基本的に漁網の編み技である「結び」と言う手法は使われていません。歴史的にニードルレースとして知られているものには、下記の種類があります。プント・イン・アリア=punto in aria (1620~1650年頃)
イタリア語で「空中ステッチ」と言う意味です。生地なし、糸だけで作られた、最初の正規のニードルレースと言われています。特徴は幾何学模様と言われていましたが、ボビンで作るトーションレースよりは、かなり難易度が高い幾何学模様に進化していました。
ポワン・プラ・ド・ヴニーズ=point plate de Venise (1630~1650年頃)
完全に幾何学模様ではないニードルレース。グロ・ポワン・ド・ヴニーズとは異なり、模様に浮き上がった部分がない。このアート的な模様は今だにコレクターが大勢いるほど人気を呼びました。
グロ・ポワン・ド・ヴニーズ=gros point de Venise (1650~1670年頃)
彫刻的な美しい外観をもち、男子服に良く似合う重厚なニードルレース。50本の糸の束をモチーフの輪郭につけ、モチーフはピコットステッチのブリッドで自由につながれた。
ポワン・ア・ラ・ローズ=point à la rose
グロ・ポワン・ド・ヴニーズに似ているがブロッドが非常に細かく、モチーフは非常に小さいポワン・プラ・ド・ヴニーズの変形。19世紀になってからこの名称が使われるようになり、17世紀レースのテキストとして用いられました。
ポワン・ド・フランス=point de Français (1670~1690年頃)
単純で幻想的なモチーフであり、六角形の網目はボタンホールとピコットが特徴である。画像はポワン・ア・ラ・ローズに一見似ていますが、そもそもヴェネツィアのレースを模造する事から始まったフランスレースが、グロ・ポワン・ド・ヴニーズのレリーフを取り除き、整然とした六角形の網目にピコットをこしらえる事で、フランスレースのスタイルを確立させて行きました。
ポワン・ド・ネージュ=point de neige (1680年~)
厳密なブロッドがなく、ピコットの集積と極小のモチーフが特徴です。ボビンレースにもポワン・ド・ネージュがありますが、それとはものが違います。ポワン・ド・ネージュはヴェネツィアで考案された最後のニードルレースでもあります。
アランソン・レース=Alençon lace, point d'Alençon (1700~)
地模様が単純な網目であり、モチーフはボビンレースのチュールレースに酷似していて、チュールレースの場合は網地と模様を同時にボビン糸で手織りしていますが、アランソンレースは網目の生地の上にニードルレースを施しています。
「フランス王立レース製作所」の一つとして、フランスのアランソン地方に設置され、間もなくして発祥したアランソンレースは、「レースの女王」と称され、現在でもウェディングドレスで多く使われています。歴史的にぎっしりしたモチーフのレースよりも、軽やかなレースへと、流行が移り変わって行きました。
しかしその後はフランス革命で、本格的なレースはほぼ消滅してしまい、19世紀になってから、フランスとイギリスで再び脚光を浴びるようになります。
1976年には、レース製造技術を守るため、国立アランソンレース工房が設立され、アランソンの市街中心の「芸術とレースの博物館」はレースと製造方法の常設展示があります。
アルジャンタン・レース=Argentan lace, point d'Argentan (1730年~)
アランソン・レースのデザインより目の詰んだものが多いですが、1750年以降はほぼ区別できなくなっていました。
ポワン・ド・スダン=point d'Sedan (1740年~)
1740年頃まではポワン・ド・フランスと同じ地模様でした、アランソン・レースと同じ特徴をみせるようになって行きます。非常に豊富な大きなモチーフが特徴であり、インドやペルシャの影響が見られます。
ポワン・ド・ガーズ=point de gaze
技法はアランソン・レースに似ている。しばしばボビンレースに結合して使われ、大きなデザインの大きな作品となりました。
1870年から、フランスは経済的、社会的に苦難の時代に入り、近隣全ての国々で、レース産業のような贅沢産業は深刻な打撃を被りました。
19世紀末以降は、レース産業と言えば機械レースの事になり、見た目にも手作りと見分けのつかないものとなりました。
20世紀以降、ヨーロッパの手工芸のレースは殆ど絶え、レースを作っている数少ない人は、自分用や楽しみのために作っているのみです。
現代のニードルレース
現代の手工芸レースは地域的なものでなく、世界中に点在する趣味の持ち主で製作、創作していたりしています。コミュニケーションが容易になっているので、レース制作技術は既に共有されていて、国ごとに特徴あるレースを自国のレースに名付けているものはまだいくつかあります。
イタリアン・ニードル・レース
レース糸と針を使ったノットレースの一種です。ノットの密度が高いのが特徴です。
アルメニア・ニードル・レース
レース糸と針を使ったノットレースの一種です。アイキャッチ画像がその作品の一つで、ネット編みを基本として、模様を展開して行くのが特徴、撚り糸の自然さを単糸で味わえる、繊細で芸術性の高いレースです。
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