画像で見るボビンレースの道具と織り方と仕上がり

筆者は編み物が趣味で、レースを鈎編みで作る事が多々ありましたが、レースの起源は鈎編みレースではなく、ボビンレースでありました。数年前に、レースの歴史を知りたくなって、自分なりに調べてコンテンツ化しましたので、歴史的にボビンレースの全盛期は16~17世紀だった事を知りました。レースの歴史については、文末にリンクがありますので、ぜひお立ち寄りください。
人類は最初の繊維である麻を見つけ、生活に取り込んでからは、織物の技術も自ずと発展して来ました、最初のボビンレースはその織物の技術を応用した手織りであって、編み物ではなかったのです。
ボビンレースは英語で「Bobbin Lace」で、中国語は「梭芯花边」です。
手織りのボビンレースに用いた技法は3種類
ボビンレースは、織物技術の中でも、主に平織り、綾織り、重ね綾織りの3種類で、様々なレース模様を織り上げました。
平織とは、縦横の糸を交互に上下へと潜らせる、最も基本的な織り方です。一般的な生地、例えばハンカチ等で確認できます。
綾織は「斜文織」とも言い、平織の縦糸と横糸の本数を変える事によって、織りあげた結果は斜めに走るような模様になります。身近では、学校の制服やお父さんのスーツなどで確認できます。重ね綾織はこの綾織のバリエーションの一つで、模様を横並びに重ねる事です。
ボビンレース作成用道具
アイキャッチ画像は、ベルギーで使われていたボビンレース用の道具一式です。スペインで使われているのは下記画像のスタイルで、フランスもスペインの道具に良く似ていました。

イギリスとデンマークはもっとスマートな道具で、オランダはもっと職人っぽい専用テーブルのスタイルでした。各国にそれぞれのスタイルはあるものの、基本的に使う道具は殆ど同じものでした。
① 織り台(大きな枕の様なもの、地域によっては固定機構付き)
② 型紙(模様のレースパターン用)
③ ピン(レース作品を固定するため、模様が複雑ほど使用数が多い)
④ ボビン(レース糸を巻くもの、模様が複雑ほど使用数が多い)
ボビンレースの種類(主要なもののみ)
トーションレース(英語:Torchon Lace、中国語:镶边花边):
幾何学模様の繰返しパターンの総称、当時の盛んに作られている地方によって、バンシュレースとフランドルレースがあります。下記画像が一般的に普及したトーションレースの概念です。

バンシュ(Binche)はベルキー南部にある小さな町です。トーションレースとして地域的な特徴があるバンシュレースは、美しいカーブの植物と動物を使ったパターンで、密度がやや高い事です。例に3枚の画像を Pinterest から引用します。



やはりトーションレースとして知られているものに、フランドルレースがあります。フランドル(Franders)地方は当時フランドル伯領を指し、オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部の一帯です。スペルから英語読みでフランダースと読まれる事もあります。例に2枚の画像を Pinterest から引用します。


網の様なチュール地に模様を施したレースの総称、作られている地域によってやはり特徴がありました。主に17~18世紀から残ったアンティークレースに、トゥナー、バックスポイントレース、シャンティイがあります。他にベーヴレス・リル、バイユ等もあります。下記画像はシンプルなチュールレースの参考として下さい。

南デンマークにあるトゥナー(Tonder)と言う町のチュールレース、特徴としては連続模様の美しさと、模様を囲むラインが協調的に糸をより合わせて太く見えるので、グラデーションが楽しめます。例に2枚の画像を Pintrest から引用します。


イギリスのイーストミッドランド地方で作られていたバックスポイント(Bucks Point)レース、特徴としてはシンプルな曲線や円による控え目な模様でありながら、優雅な感じがします。レースが高級品である時代に、比較的に庶民に好まれたものです。例に2枚の画像を Pintrest から引用します。


パリから北へ40キロのところにあるシャンティイ(Chantilly)と言う町のチュールレースは、特徴的に植物の曲線を細やかに表現している模様、黒地で大胆に表現しているものが多く、勿論白レースも作られています、現在でもウェディングドレスで多く使われています。例に2枚の画像を Pintrest から引用します。


他に流行したレースは、現在ネット上でも見つける事が希であり、アンティーク若しくは趣味の世界で手掛ける人がいるくらいで、時代はほぼ編みレースやニードルレースへ移行しています。
テープ式レース
ロシアンレースに代表され、テープ式レースの分類では、何それ?と思われます。ロシアンレースと言えば、あ~となるほど理解されます。テープ状に編みながら繋いで、少ないボビンで大きく作れる革新的な技法です。

ギュピアレース(英語:Guipure Lace / 中国語:无底网蕾丝):
デンマークで独自に発展した網目等の地模様がないレース、その分、ボビンの運びが複雑です。ヴェネツィア、ベッドフォードシャー、クリュニー、クリスチャン4世が知られています。
クリスチャン4世がレースをこよなく愛していた事から、デンマーク王室伝承のレースは全てクリスチャン4世と言う名前があります。下記ハンカチーフはクリスタル4世のレプリカです。


イギリスのベッドフォードシャー(Bedfordshire)を中心に発展して来たギュピアレースの1種です。ラインと葉の太さに特徴がありますので、じっくる観察するとわかります。




切断糸レース:
モチーフ毎に糸を切断し、別の糸で再びモチーフを全部繋げる制作方法です。
ベルギーのブルッヘを中心に発展したブリュッセル(Brussels)レースも、植物モチーフを織ってから一旦糸を切断し、模様に繋げていく技法で作られています。

イギリスのホニトンでも、切断糸レースが作られていました。切断糸のレースの良さは、「自由」と言う言葉に尽きるではないでしょうか。何も気にすることなく、好きなようにモチーフを作って、後でパターンに合わせて繋げるだけです。
左右対称してもしなくても、丸みがあっても無くても、自由です。鈎編みで言うと、「アイリッシュクロッシェ」に当たります。クリエイティブの幅が全然違って来ますので、整然とした幾何学図案やシンメトリーのに拘る人とは、対極にあり、ボビンレースの中でも、最も個性があると言えるではないでしょうか。


どうでしょうか、何れのレースも繊細で華やかですね。現代はレースと言えば乙女のイメージがしますが、中世ヨーロッパでは、女性どころか、むしろ男性がファッションにレースをふんだんに使って、その豪華さと高貴さを見せびらかすものでした。
鈎編みの無い時代に、ボビンだけに頼って、こんなに複雑な模様のレースを作るのは、大変だったでしょう。まず頭脳明晰でなければ、ボビンを運ぶ事で糸を捻じったり撚ったり、こんな複雑な模様を作るなんて、出来ませんよね。
ボビンレースは2~3世紀のエジプトの遺跡で発掘され、千年以上前から、人類は既に高い技術力と芸術性を持っていましたね。ボビンレースはもともと織物技術を使っていたので、現代ではほぼ機械編みに取って代わられています。
その人類の知恵で出来た技術が、争い好きな凶暴因子によって、幾度も破壊され、近年ようやく平和が続いて、知恵が蓄えられてきたから、科学も進化して来ました。人類の進化は、決して戦争や革命と謳われる暴力では成し遂げられない事を、みんなが知って置くべきものですね。しかし、今でも世界の何処かで凶暴が振る舞い、知恵の実である文化や芸術が破壊されています。
たかがレースですが、教えられる事は実に沢山ありました。
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レースの種類について、勉強すればするほど、覚えられないほど多いとわかって来たので、「レースの分類を勝手に整理してみた」と言うページを作って、分類をしました。参考になると思う方はどうぞお越しください。
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