麻と言う素材について
何故最古の繊維が麻なのか、それは麻の生育特徴にありました。農業がまだ原始時代の頃でも、栽培時期と条件さえ把握すれば、簡単に栽培ができ、平均3~4ヵ月で収穫が出来てしまいます。成長が早いのに、茎の皮からは靭皮繊維が取れ、種子は食用と薬用に使われ、実を油に加工すると、大豆にも劣らない栄養があるなど、正に豊かな自然の恵みと言えます。
麻と呼ばれる繊維は、植物として20種類近くもあります。同じ科に属しているものかと思えば、全然違いましたね。古から世界の各地で呼ばれていた麻を、慨して言うなれば、同じような工程によって取れる靭皮繊維を精製し、得られる繊維を「麻」と呼ぶ概念がありました。
対して、綿繊維は花の綿を使う繊維ですが、麻から精製された繊維の塊も、昔から「わた」と呼んでいました。わたの概念も、コットンだけでなく、加工された繊維の塊であれば、麻繊維でも、絹繊維でも、昔から「わた」と呼んでいました。
麻の種類は20種近くあります
日本で生活用品に使われる麻は、主に3種類あり、植物学上の分類でアサ科に属すものは①と②で、③は何と、イラクサ科に属しています。
①大麻(日本古来より使われ、繊維名:ヘンプ、学名:Cannabis sativa)
②亜麻(繊維名:リネン、学名:Linum usitatissimum)
③苧麻(別名:カラムシ、繊維名:ラミー、学名:Boehmeria nivea var. nipononivea)
日本古来の麻繊維の原料である植物は①の大麻です。種子は生薬としても使われていましたが、麻薬のマリファナとしての成分には目が行きませんでした。大麻草には精神的興奮を呼び起こすTHCと言う成分があり、アメリカではそのTHCが3%以上含まれると、麻薬として取り締まられるようになっていました。戦後、進駐軍の大麻成分検査によって、日本の大麻草にはTHCの含有量がある一定のパーセンテージがあり、大麻取締法が作られたわけです。
大麻取締法以降、日本で麻繊維の文化が急激に減少し、現在でもTHC含有率が1%未満の繊維用大麻草が栽培されてはいますが、戦前の数パーセントしかありません。衣料や生活用品に使う麻繊維の多くは、輸入に頼っています。
麻の種類は他にも多くあり、知られているところでは、以下の様なものがあります。
・黄麻(繊維名:ジュート、シナノキ科、麻袋や紐で良く使われる)
・洋麻(繊維名:ケナフ、アオイ科、紐や壁材で良く使われる)
・マニラ麻(繊維名:アバカ、バショウ科、ロープや帽子で良く使われる)
・サイザル麻(繊維名:サイザル、セキサン科、ロープや紐で良く使われる)
日本では、ヘンプ、リネンとラミー以外は、その他植物繊維に括られ、製品には植物名まで表示する事はありません。その他扱いなので、20種類近くある麻と言われる種類の詳細は、上記以外のデータが、なかなか見つからないのが現状です。
使用部分による麻繊維の違い
原料となる植物の茎の表皮を剥がして取る繊維は、靭皮繊維と呼びます。衣料や生活用品の多くは、この繊維で作られます。
ちょうど左上の標本が大麻草の葉に似ています。このように、葉を腐らせて、繊維だけを取り出して加工するのが、葉脈繊維です。因みに、上記の麻の種類の中で、マニラ麻とサイザル麻は、葉脈繊維を使っています。
麻繊維の特徴
麻繊維の特徴は、それぞれの原料となる植物で異なりますが、概ね共通している特徴があります。それは、
・麻の繊維はマカロニの様に、中央に大きな穴があり、水分の吸収と排出がし易い
・天然繊維の中で最も強く、水に濡れると更に強くなる
・張りと通気性が良く、さわやかな肌触りで、涼感がある
・混紡せいに優れ、他の繊維と混紡する事で新しい風合いが生まれる
・植物故に生分解性が良く、エコロジーな繊維である
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