糸の元である繊維の種類と特徴について
日本経済産業省消費者庁には「家庭用品品質表示法」が定められており、市販製品には繊維の種類や扱い方が表示されています。市販品から見ると、現在の家庭用品や服飾に使われる糸の中で、大きく分けて植物繊維を原料とする糸、動物繊維を原料とする糸、化学繊維で人工的に作られる糸の3種類があります。
植物や動物由来の繊維は、人工的に作り出されるものではないので、まとめて天然繊維とも言います。天然繊維には、衣料や小物ではあまり使われないが、建築などその他分野で使われる鉱物由来の、鉱物繊維もあります。
植物や動物由来の繊維は、人工的に作り出されるものではないので、まとめて天然繊維とも言います。天然繊維には、衣料や小物ではあまり使われないが、建築などその他分野で使われる鉱物由来の、鉱物繊維もあります。
天然繊維に対して、人間の手によって、化学的処理を含め、化学的な手段によって、作られる繊維を化学繊維、または人造繊維(artifial fiber)とも呼びます。人造繊維の中でも、純粋に鉱物から作り出す繊維を無機物繊維と呼びます。そして、何らかの生物の働きによって作り出されたものは有機物と言うので、石油由来のもの、生物由来のものは有機物繊維と呼びます。
マインドマップ式に纏めると、こうなります。
マインドマップ式に纏めると、こうなります。
●種子毛繊維 ~ 主にアオイ科の植物の種子を利用した繊維
(綿、カポック)
●靭皮繊維 ~ 植物の茎の皮を利用した繊維
(ヘンプ、リネン、ラミー、ジュート)
●葉脈繊維 ~ 主にバショウ科の植物の葉脈を利用した繊維
(マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻)
●果実繊維 ~ ココナツの果実無いから採取される繊維
●その他植物繊維 ~ 上記分類に入らない植物繊維
(いぐさ、麦わら)
何れも植物の骨格を構成するのと同じ成分で、セルロースで出来ています。最近は家庭用品に定めのない、新しい植物繊維も多く出回っていています。
植物は天然素材故のやさしさがあり、静電気を起こさないのが特徴です。故に、肌に直接触れるアンダーウェアーや、春夏の衣類などに多く使われています。ただ植物繊維の保温機能は、動物繊維と比べると劣ります。
少しだけ、繊維から糸になるまでの経過も知りたくなったので、ちょっとだけ勉強しましたので、気になる方はどうぞ参考までに、お立ち寄りください。
木綿からどうやって綿糸になるのか → 「綿糸が出来るまで」
綿製品は何故価格がピンキリなのか → 「綿の種類とブランド」
靭皮繊維からどうやって麻糸になるのか → 「麻糸ができるまで」
動物繊維にはどんなものがある?特徴は?
動物繊維として古くから知られているのはやはり、ウールとシルクですよね、それらの製品はとにかく高いのがイメージにありました。しかし動物繊維はそれだけではなくて、やはり細かい分類がありました。●獣毛 ~ 哺乳類の動物の体毛を利用した繊維
(ウール、カシミア、モヘア、ラマ、ビクーニャ、アルパカ、キャメル、ラクダ、アンゴラ、馬毛)
●絹 ~ カイコガ科の昆虫が作る繭から取れる繊維
(シルク)
●その他動物繊維 ~ 上記分類に入らない動物繊維
(羽毛、蜘蛛糸)
動物繊維の成分は、主に蛋白質であり、燃やすと強い焦げ臭いにおいがします。動物繊維を採取する場合の多くは、自然の中にある個体数を集める手間と体毛の品質を確保する為、多くは家畜として育てます。
動物繊維の特徴は弾力性に富み、空気を多く含み、保温性に優れ、加えて難燃性があるので、古くから防寒衣類や、インテリア用品などに使われて来ました。動物繊維は多くの油分を含んでいるので、撥水性に優れていますが、逆に吸水性は低い、また、動物性蛋白質(動物の死骸)を食す虫による、食害を受けやすいのです。
鉱物繊維にはどんなものがある?特徴は?
当サイトが関わるような繊維は、主に動植物繊維ですが、ついでに鉱物繊維の名前だけは憶えて置きましょう。現在唯一知られている純粋な鉱物繊維は石綿です。アスベストとして広く知られています。 石綿はどうやってできたのかは、まだ不明な部分が多く、採掘時は岩石状ですが、砕けば容易に繊維状となります。強靭で弾力に富み、不燃性、耐火性と耐薬品性があり、建築用の断熱材として使われて来ましたが、1995年頃に発がん性が確認されて以来、使用禁止となりました。しかし、現在でも長い歴史を持つ家屋には、まだアスベストが断熱材として存在しているのが実情です。
無機質繊維にはどんなものがある?
無機物を化学的処理等、人の手を加える事で得られる繊維の事です。パルプ業界で良く使われるもので、聞いた事がある名前も多いと思います。
●ガラス繊維、マイクロガラスファイバー → 建材や断熱材で多く使われる
●炭素繊維 → 電磁シールドや耐熱構造体に応用される
●活性炭素繊維 → フィルターで多く使われる
●セピオライト → 吸着脱臭用が多い
●チタン酸カリウム繊維 → 絶縁材、フィルターに応用される
●セラミック繊維 → シール材、断熱材、フィルターなどに応用される
●ウォラストナイト → ケイ酸カルシウム繊維で耐熱性、吸音遮音性、絶縁性に優れている
●ロックウール → 断熱材、吸音板に多く使われる
合成繊維にはどんなものがある?特徴は?
動物繊維の蛋白質構造を真似て、低分子の原料から合成によりつくられた高分子組成の化学繊維を、合成繊維と言います。1885年のレーヨン実用化以来、次々へと新しい合成繊維が生まれ、現在では繊維分類の中で、合成繊維が最も種類が多いです。
既に周知されている三大合成繊維は、ナイロン、PE、アクリルです。その他も含めて、現在の合成繊維の種類を見てみましょう。
●ポリアミド系 ~ アミド結合によって多数のモノマーが結合してできたポリマー
(ナイロン6、ナイロン66等、ケブラー、トワロン、ノーメックス、コーネックス)
●ポリエステル系 ~ 多価カルボン酸とポリアルコールを脱水縮合してエステル結合を形成させることによって合成された重縮合体、組合せ方で様々なポリエステルを合成できる
(ポリエステル、ダクロン、テトロン、ポリエチレンテレフタレート/PET)
●ポリウレタン系 ~ ウレタン結合を有する重合体の総称
(繊維では、スパンデックス → ジャージ、水着、レオタードの素材に)
●ポリビニルアルコール系 ~ 合成樹脂の一種で、親水性が非常に強い
●ポリビニルアルコール系 ~ 合成樹脂の一種で、親水性が非常に強い
(PVAと略され、接着剤やバインダーに使われる事が多い)
●ポリアクリロニトリル系 ~ アクリロニトリルをラジカル重合させて得られるもの
(PANと略され、アクリル繊維の主成分である、エクスラン、カシミロン)
●ポリ塩化ビニル系 ~ 塩化ビニルの重合反応で得られる高分子化合物
(テビロン、エンビロン)
●ポリプロピレン系 ~ プロピレンを重合させた熱可塑性樹脂
(パイレン)
●ポリエチレン系 ~ エチレンが重合した構造を持つ、最も単純な構造をもつ高分子
(容器や包装フィルムに多く使われる、ポリエチレン)
●ポリスチレン系 ~ 原油・ナフサを原料に合成されるスチレンをモノマーとするポリマー
●ポリスチレン系 ~ 原油・ナフサを原料に合成されるスチレンをモノマーとするポリマー
(ポリスチレン)
上記の内、ハンドメイドで度々お世話になる繊維には、ナイロン、PP系の繊維、スズランテープの原料であるPE(ポリエチレン)の繊維が多いです。エコたわしとかで使われる糸は、アクリル100%ですよね。
アクリル繊維は天然ウールを真似て、意図的に作られているので、ウールに近い特徴を持っていますが、合成繊維の多くは出来上がって見ないとわからないもので、製品になれそうなものを性能テストして行くので、はっきり言って、共通した特徴は掴める事が出来ません。機会があれば、それぞれの縁がある繊維を個別に紹介して行きたいと思います。
半合成繊維にはどんなものがある?
天然高分子化合物を原料に、他の物質との化合により、多少の化学変化を加えて紡糸したものが、半合成繊維に区分されます。植物繊維由来のセルロース系のものと、動物繊維由来の蛋白質系のものがあります。
●セルロース系 → アセテート
●タンパクシツ系 → プロミックス
再生繊維にはどんなものがある?特徴は?
再生繊維は一度使用したものを再生する事ではなく、天然高分子化合物を原料に、それを溶解してから紡糸したものです。化学薬品を使って一度溶かしてあったものの、元は自然由来の成分ですので、生分解性に優れ、環境への負荷が小さいのがメリットです。
再生繊維は以下の様に分類されています。
再生繊維は以下の様に分類されています。
●繊維素系[編集]~ 植物繊維を再生したもの
(レーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセル)
●たんぱく質系 ~ 牛乳のたんぱく質や、トウモロコシのたんぱく質を利用したもの
●たんぱく質系 ~ 牛乳のたんぱく質や、トウモロコシのたんぱく質を利用したもの
(メリノバ、バイカラ)
●その他の再生繊維 ~ 上記分類に入らないもの
(アルギン酸繊維)
(アルギン酸繊維)
再生繊維も勿論、それぞれの個性がありますが、大体共通しているような特徴もありますので、箇条書きにしてみましょう。
・吸湿、放湿性が優れている
・光沢があり、ドレープ性に優れている(人の好みによるが)
・染色が綺麗
・天然高分子の特徴を引き継いで、熱に強いし静電気を起こしにくい
・擦れ等によって白色化しやすい(これも好みで風合いが良いとも考えられる)
・擦れ等によって白色化しやすい(これも好みで風合いが良いとも考えられる)
個人的な話ですが、筆者は静電気が溜まり易い体質で、寒冷期はドアノブや車などで、ビリっと来る事が多く、非常にストレスを感じるので、身に付けるものは殆どが天然繊維で、防寒着だけは値段が張るので、合成繊維を使います。
再生繊維は光沢と皺になり易いところが、あまり好かれませんが、吸湿性、柔軟性、静電気を好まない点では、部屋着として愛用します。社交場や儀礼式典の為のドレスなどは、再生繊維の方が華やかで美しい場合も多いと思います。
色々な繊維を知って、特徴を理解すれば、より幅広くおしゃれを楽しんで、公私ともにストレスなく、人生をリラックスに過ごす事が出来るようになりますよね。